ナギとなつきの高いもん喰わせろ
第3回 ナギのキモノ座への(いざな)    2017年3月28日



「月影屋」重田なつき、
  タイムマシンで江戸からやってきた
?!


なつき:春だわねぇ

ナギ:き始めたね!

なつき:春と言えばさ、ナギさん、今年も4月から田大学で教えるんでしょ?

ナギ:大学っていうか、早田大学エクステンションセンタっていう、でも参加できるスクルなの。今年は、して『人物像でみ解く「江キモノファッション文化史」』。なつきさんもぜひ受講してよ〜!(座の詳細については、「ナギの日本文化ノ」へ)



なつき:まぁ受講したら間違いなく、今年の新作浴衣は夏に間に合いませんわね。受講しなくたって間に合わないんじゃないか? っていう崖っぷちラインに只今おりまして…(号泣)。

ナギ:だ、大丈夫? 新作浴衣、楽しみにしてるんだからー! でもさ、前から思ってたんだけど、なつきさんって、そもそもどうやって、そういう「的なキモノ」をそんな理解しちゃったの?

なつき:(しばし考えて)そんなのね、お玉てりゃわかるのよ〜〜〜ッ!

ナギ:言うと思った(笑)。でもね、私なんかはね、年ずっといろいろな料やら知やらをかき集めて理解しようとしてきたけど、なつきさんって感性ですぐピンときちゃう人でしょ?

なつき:まぁ、あたしだってちょっとは勉強したさぁ(笑)。でもね、歌舞伎の、特にお玉さんが出るようなが好きでてたら、なんとなく分かってきちゃったというのはある。

ナギ:特に、どこかで着付けを習ったりとかもしてないんだよね?

なつき:ないわね。

ナギ:ホント、大学代からずっと江文化に浸ってきた私としては、月影屋の浴衣をたときの「うわ! 江の浴衣、やっとつけた!」っていうあの衝撃は、忘れられないもん。

なつき:白との浴衣のアイディアもねぇ、自然に降りてきちゃったのよねぇ。不思とねぇ。(これについては、対談第1回「カッコイイ浴衣について」をおみください)

ナギ:もしかして、なつきさんって、戸時代からタイムスリップしてきた人か? ってたまに思うことあるよ(笑)。

なつき:かに、あたし、「浮世の人みたい」ってよく言われる。

ナギ:浮世の人(笑)。型も、芳年の浮世に出てくる人ソックリだもんね。



ナギが主する、
   「人物像を
定してキモノを学ぶ」ことの意味


なつき:ところでさ、ナギさんの
座『人物像でみ解く「江キモノファッション文化史」』の、「人物像で読み解く」ってどういう意味なの?

ナギ:私ね、つねづね、「着るもの」と「着る人」を切りしては考えられない、と思っていまして。なので、必ず、江の典型的なキャラクタ定して、その身分や職業やライフスタイルも明しながら、キモノや型についても解するようにしてるの。



なつき:吉原の花魁とか、芸者とか、娘とか、年とか、回キャラクタ定してるってことね?

ナギ:そう。というのもね、「キモノ」というファッションが完成した江戸時代って、身分社会だから。着るものや型は、「その人が社会的にどのようなポジションの人なのか」を表す大事な号でもあったのね。

なつき:うんうん。

ナギ:だから、「着るもの」と「着る人」を切りしてしまうと、かえってしくなっちゃう。それは同に理解したほうが、あとあとラクだと思うの。

なつき:かにね。例えばさ、キモノを全く知らない人が、のキモノに、金糸糸のを合わせちゃう、というようなことがあるじゃない? でも、なぜそのみ合わせがおかしいのかと言うと、色味とか模とかで判断してるというよりも、それぞれの背後にあるによって「コレとコレは合わない」と判断してる、ってことよね。

ナギ:そうなの。でもね、そういう史的背景って、意外と、キモノの着付け本とかルルブックとかにいてなかったりするじゃない? だから、私もキモノ初心者のときは「なんでなんで?」ってモヤモヤしっぱなしだった。「こっちのほうが格が高くて、こちらのほうが格が低い」と言われても、「それはわかった。でも、なんで?」と。理屈で得できないことって、丸暗するの苦痛なのよ。少なくとも私はそうだった。

なつき:「なんでなんで?」ばっかり言って、一番生徒にしたくないタイプねぇ(笑)。

ナギ:でも、を持つことが、すべての始まりだよね。「なんで、こっちよりこっちの方が格が高いってことになってるの? なんでなんで?」って、しつこく思いけていいと思う。

なつき:あたしだってさ、「歌舞伎で役者が着てるキモノはこんなにカッコイイのに、なんで、成人式とか婚式とかでかけるキモノはこんなにダサいのかしら?」って思ったものよ

ナギ:まさに、私も! 高校生のときに『院花子の生涯』をビデオでてね、「こんなにセクシでカッコイイキモノが昔はあったのに、今はなんでこうなっちゃった?」と、衝撃を受けたものだわ

なつき:昔のキモノと後のキモノを比べて、コレとコレが同じ仲間だなんて、にわかには信じられなかったわよね(笑)。

ナギ:うん。純粋に「なんでだろう?」って思ったなぁ。

なつき:疑問よね。

ナギ:そういう疑は、一生持ちけなきゃ、って思うよね。



いい情景、いい景色

  そして、心のなかのファンタジについて

ナギ:でもやっぱり、私もなつきさんも、歌舞伎とか映画とかをて、去のキモノのカッコよさを発見した、ってことだね。

なつき:何度もしつこく言ってるけど、「月影屋」のルツは、歌舞伎とか浮世にあるわけ。歌舞伎をて、まず、「なんとまぁ、いい景色だねぇ」と思ったわけですよ!(これについては、対談第1回目第2回目をおみください)

ナギ:あ、それそれ! その「景色」っていう言い方、素晴らしいと思う。シンっていうか、面っていうか、その人物のいる全体だよね。

なつき:こないだ、井ナギ先生に「月影屋」をいていただいたので、プロフィルペジにもアップしましたが。(ぜひ、月影屋、あるいは、背な江美学への」をおみください!) そこでもいていただきましたが、そもそも「月影屋」をなぜやっているかって、アタクシ重田なつきが、"舞台総監"になって、カッコイイ情景芝居をつくりたかった、ってことに尽きるんだよね。

ナギ:その情景芝居に出てくる役者のための衣装が、「月影屋」の浴衣だ、と。

なつき:そういうことがやりたかったの。

ナギ:でも、それわかるなぁ。私ね、こないだ自分の本(『色っぽいキモノ』)を、久しぶりにんだんだけど(笑)。そこでね、「心のなかのファンタジ、例えば、江戸時代後期の深川芸者の世界や、明治代の女侠客の世界など、私が身を置きたいと思っているファンタジの世界を、内で具化するためにキモノを着るのだ。自作自演を演じてしまおう。」なんてことをね、私、いてて。

なつき:へぇ〜。ナギさんの持ってるファンタジって、どんなの?

ナギ:いっぱいあるんだけど、例えばね、『色っぽいキモノ』にもいたけど、大学代にんで中になった『春色梅誉美』シリズの深川芸者の世界、とか


上画像:江戸時代の和本『春色梅児誉美』井嶋ナギコレクションより

なつき:『梅ごよみ』ね、こないだ、歌舞伎座でてきたわよ

ナギ:私もた! 菊之助、厚な色を出してたね

なつき:あの隅田川のねぇ、船のシンでさぁ、こう衣いて裾模のキモノを着た芸者が、色男の丹次郎を見かけてこう言うのよ、「いい男だねぇ〜〜ッ」(仇吉のモノマネ入る)

ナギ:月影屋ッ!

なつき:こういうセリフもね、キモノを着たときに言いたいわけ(笑)。

ナギ:そうか(笑)。私ね、かもしれないけど、昔からフィクションとか映画とかを取りみすぎて、「フィクションの中に入りたい」がものすごくかったの。それで、キモノを着ることで、そういう望をたそうとした、っていうのはあるなぁ。

なつき:ナギさんは、膨大な数の映画やら小やら歌舞伎やら、たりんだりしてきてるもんねぇ。膨大なお金と時間やしてねぇ。

ナギ:うん。なんか私、現実世界に生きてないのかもしれない、と最近思うんだよね

なつき:かにねぇ、女、浮世してるっていうか、霞(かすみ)食って生きてるみたいなとこ、あるもんね(笑)。

ナギ:(泣笑)



キモノは、その代の「文化」の一部である

ナギ:つまりね、私は、キモノを「キモノだけ」で取うことにあまりポイントを置いてなくて、「キモノがどのような世界で生きてきたのか」ということが大事だと思ってるんだ。

なつき:それって、やっぱり、「いい情景、いい景色ありき」でしょう。

ナギ:そうね。座でもね、そのキモノや装いが、歌舞伎や映画や文学や浮世などで、どのように描かれてきたか? っていうことを、具体的にていくようにしてるの。

なつき:あ、それで座のタイトルに「文化史」って付いてるのか。



ナギ:私ね、いつも思ってるんだけど、キモノでも洋服でも、それ「だけ」で独立して存在しているものではなくて、その代の「文化」の一部だと思うんだ。

なつき:それはね、あたしも声を大にして言いたいね。

ナギ:なつきさんも、例えば、洋服のファッションとかも好きだけど、それに関連したアトとか音とか芝居とか作家とか、いろんなものが好きじゃない?

なつき:当然よぉ。例えばさ、80年代の洋服があったとして、それは、洋服だけで成立してたんじゃなくて、その当の音やお芝居や思想にもつながってるわけだし。

ナギ:だよね! こういうこと言っちゃうと弊があるかもしれないけど、そう考えると、「キモノだけ」をるというのは、片手落ちだと思ってて。「キモノだけ」といういには、私はあまり味がないなぁ、と。か、なつきさんも、「キモノが好きで好きでしょうがないってわけじゃなかった」って言ってたよね?

なつき:ああ、むしろ、嫌いかも(笑)。

ナギ:(笑) えと、「いわゆるキモノ」が好きじゃないってことね(笑)。でもね、嫌いだからこそ、自分が好きだと思えるものをつくってる、っていうのは、ものすごく本来的だと思うよ。

なつき:でしょう? まぁ、あたしは、もともとお洋服が好きだったからさ。ファッション好きで、歌舞伎をていれば、自然と歌舞伎のキモノに目がいく、って

ナギ:うんうん。

なつき:だから、「俗」とも言えるよね、フゾクじゃなくてさ(笑)。たとえばね、あたし、洋服でもディオル・オムのタキシードみたいなジャケットが大好きで、何着も持ってるんだけどさ。

ナギ:いつも着てるあのジャケットね、素敵だよね〜!

なつき:しかも、同じ型のものを2枚も持ってんの(笑)。こういう礼服みたいなジャケットを着るとね、あたしもフォマルな身のこなしになるもんね。で、月影屋の浴衣を着ると、お玉さんが演じる土手のお六みたいなふるまいになるわけよ、しゃべり方とかね、いとかね。それを含めての「」なのよね。

ナギ:あ。なつきさん、言までわるよね。意外と。

なつき:そうそう、ガラッと言づかいもわるし、き方までわっちゃうもん。こう歩いていって、こう止まる、とか。

ナギ:ピシッとするときはすごいピシッとするよね。きれいな敬つかってね、礼正しくてね。みなさん、なつきさんは、いつも「ガラッパチ」なわけじゃありませんよ(笑)。

なつき:当たり前じゃない! みくびってもらっちゃぁ困るんだよッ!(土手のお六のモノマネ入る)


上画像:江戸時代の和本『春色辰巳園』井嶋ナギコレクションより



インプットがあって、初めて理解は深まる

なつき:でもさぁ、今日してきたようなことってさ、局、インプットが大事、インプットがなきゃ始まらない、ってでもあるのよねぇ〜〜

ナギ:インプットねぇ。勉しなさい、ってことかぁ。

なつき:そう言えばさ、こないだ、ナギさんが「私、インプットをもうそろそろめようと思うの」って言ったじゃない? あれ、爆弾発言だったわよね。ビックリしたわよ(笑)。

ナギ:あ、そんなこと言ったか! すっかり忘れてた(笑)。いや、でもホントね、私、40数年生きてきて、インプットばかりしぎてきたかもと思って、それはそれで思うところあるのよ(笑)。この異様なインプット欲っていうか、もうキリがないじゃない?

なつき:ホントだよ、女もそろそろ老い先短いんだし、インプットだけで人生わっちゃうわよ! みたいなしたじゃない。もう忘れてるとは…。

ナギ:すっかり忘れて、日々インプットばかりしてた(笑)。

なつき:でもね、だからこそ、あたしは女を尊敬しちゃうんだけど。やっぱりね、膨大なインプットの量があるわけでしょ、膨大な量の本をんでて、映画やら歌舞伎やらいろんなものをてて、それを系立てて、自分のを抽出してるわけでさ。でもって、そのエッセンスを、座で教えてるわけでしょ?

ナギ:そうねぇ。

なつき:だって、女の家にアホみたいにたくさんある本をさ、こっからここまでったら大だよ? っていうよ。ウン100とかかってんだから!

ナギ:そんなにかかってるかなぁ、古本が多いからなぁ(笑)。

なつき:そんなかいことはどうでもいいのよッ!! そういうナギさんのエッセンスを15くらいで受けられるんだから、皆様、ナギさんの座、超お得よ! と言いたい。ていうかさ、お月謝20くらいもらったら?

ナギ:あはは(笑)。でもね、かに、自分が「なんでなんで?」って思って、10年以上かけて、調べたり考えたりしてきたことを、何回かの座で教えてもらえるとしたら、自分もこういう座あったら受けたかったって思う(笑)。自分で言うのもなんだけど、「お得」だと思います



なつき:井ナギさんがインプットをめてしまう前に、皆様、受したほうがいいかもよ?

ナギ:だけど、「インプットめる」言、自分ですっかり忘れてたっていうの、ちょっとショック

なつき:女みたいな「しらべ魔」が、インプットを諦めるわけないわよね。それってもう「癖(へき)」でしょ。「性(さが)」っていうか。

ナギ:「(ごう)」っていうか。

なつき:貴女も大変ねぇ…。

ナギ:(笑)

なつき:まぁでも、インプットがないと、局は、何も始まらないし、深い理解にも及ばない、っていうのが、アタクシの常日頃からの持論ではあるわね。インプットって、本当に大事。

ナギ:じゃあ、まずは、みなさん、歌舞伎や映画をてみましょう、ってことかな?

なつき:っていうか、もっと手っ取り早い方法があるわよ! ナギの「江キモノファッション文化史」を受すればいいのよ!!!

ナギ:そうだった(笑)。みなさん、ぜひお気軽にご参加くださいね!座の詳細については、「ナギの日本文化ノ」へ)……というわけで、次回の対談のテマは、月影屋の新作浴衣についてかな?

なつき:ぎゃぁぁぁ〜〜〜!!! もし新作浴衣が出来てなかったら、ゴメンなさ〜い!(笑) 次回も、夜露死苦!!!!!







井嶋ナギ 
東京生まれ。
上智大学文学部にて江戸文学を学び、現在、文筆家。日本文化(着物、歌舞伎、日本舞踊、江戸文学、日本文学、日本映画など)を得意フィールドとし、「現代の生きた文脈で日本文化を捉えなおすこと」を課題としている。
著書に『色っぽいキモノ』(河出書房新社)。
http://amzn.to/2akdqVx
早稲田大学オープンカレッジにて、浮世絵、歌舞伎、映画、文学などを題材にキモノの歴史をひも解く「文化史講座」を開講中!
「井嶋ナギの日本文化ノート」
「井嶋ナギの浴衣講座」










重田なつき / 月影屋 店主・デザイナー 
日本大学理工学部建築学科卒業。
2001年、月影屋を創業。2004年、渋谷区富ヶ谷に路面店をオープン。
今夏12年目を迎えたラフォーレ原宿エントランススペースのほか、伊勢丹新宿店、渋谷パルコ、福岡IMSなど全国でポップアップショップを開催。ロンドン・ファッションウィーク及びパリ・ファッションウィークへの出展や、台北でのポップアップショップなどを通じて、海外にも顧客層を広げている。また、特集番組を組まれたNHK WORLDなどの国外向けメディアや、海外メディアからのオファーも多数。











archive

第1回 2016年8月4日
カッコイイ浴衣について
 



第2回 2017年3月8日
歌舞伎座に行って参りました



第3回 2017年3月28日
井嶋ナギのキモノ講座への(いざな)



第4回
2017新作月影浴衣
「俺発、天使(あの娘)行き」が出たわよ!



「月影屋、あるいは、鯔背(いなせ)な江戸美学への愛
井嶋 ナギ(文筆家) 


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対談ナギとなつきの高いもん喰わせろ
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