なつき:ビッグニュース! 2017年新作月影屋浴衣が出来上がったことを、ここに発表いたします!!!
ナギ:おめでとう!(パチパチパチ) それにしても今年は、新作浴衣の出来上がり、早かったね?
なつき:そうなのよ! こないだもね、某ラ◯ォーレの担当のお兄さんから、「今年は早いですねっ!」って言われちゃったもん。
ナギ:5月にもう新作浴衣が出来てるなんてねー! すごいよね!!!
なつき:って、それ、一般的には早くないんだけどね……。
ナギ:うん、知ってる(笑)。
なつき:でもね、今年は凄いのよ。アタクシ、何年かぶりに、いわゆる「ゾーン」に入りまして。
ナギ:ゾーン=究極の集中状態ってやつね。
なつき:「まりことアキラの浴衣」なんて、1日でバーっと描きあげちゃったんだから!
ナギ:おお!
なつき:まず最初に描いたのは、「夜露死苦浴衣」ね!
ナギ:おおおお! 素晴らしい!
なつき:とか言ってさぁ、貴女、「夜露死苦浴衣」が新作だって気づかなかったわよねぇ? 新作発表会で「夜露死苦浴衣」を着たアタシを見て、「あれ、新作浴衣、着てないの?」って言ったわよね……。
ナギ:えーっと(笑)。
なつき:こないだもさ、某スタイリストのオネエさまが月影屋の店に来て、「新作見に来たわよー!どれ?」って言いながら、目の前に釣り下がっている「夜露死苦の浴衣」を暖簾のようにかき分けて入ってきたわ……。
ナギ:あはははははは。
なつき:この「夜露死苦浴衣」の既視感たるや(笑)。
ナギ:なんか、見たことあるような気がする、っていう(笑)。
なつき:ま、それよりもさ。さらに凄いのはね、いつもお願いしている染め屋さんから、「今までやってきた中で最短で仕上げました!」って報告受けちゃって。伊勢型紙の納期がね、「史上最短」だったらしいのよー!
ナギ:史上最短記録、ついに樹立! それって、月影屋だから急いだ、ってこと?
なつき:そうそう。月影屋=至急! みたいな感じが浸透しつつあるらしく(笑)、急いでくださったみたいで。涙出ちゃうわよ〜〜。まあ、アタクシが柄の図案を提出するのが遅すぎるから職人さんたちが急がざるを得ない、というね……
ナギ:でもさ、月影屋が唯一無二な作風を長年出し続けてきたゆえ、ご無理もしてくださるんだわねぇ。
なつき:ありがたいわよねぇ(泣)。月影浴衣の本気なつくりは、そういう「わかってくださる」職人様たちがいてこそ、なのよ。
ナギ:長いお付き合いを経て、月影屋への対応方法は了解済み、ってことか。それを言うなら、私もそういう感じ、あるようなないようなあるような……。
なつき:そう言えば貴女、この対談の原稿もお任せしちゃってるけど、取材含めて2日で仕上げたりしてるわよね(泣)。仕上げたりしてるわよね(泣)。
ナギ:うん、徹夜でね(泣)。
ツッパリ、「喫茶月影」にて、天使に会う
ナギ:ところで、今年の新作浴衣の月影劇場「俺発、天使(あの娘)行き」、今年もさすがカッコイイね!!!(※ 月影劇場とは:毎年、月影屋が新作浴衣を発表するのと同時に制作するグラビアのこと) けど、、みなさん、、ちょっとコワイよーう(笑)
なつき:そりゃそうよ! コワモテ揃えたんだもん。
ナギ:これって、ヤンキーなの?
なつき:ちょっとぉ! 「スケ番」と「ツッパリ」って言ってくれる?!
ナギ:そうなんだ(笑)。
なつき:アタシのマブダチの東子ちゃんとモツ鍋食いながら、「2017年の月影劇場にスケ番とツッパリ出すことになったから、貴女、聖子ちゃんカットになって出てよ」って言ったら、二つ返事で「やるやるぅー! じゃあ、私、前髪のばすぅー!」(モノマネ入る)って言ってくれて。「なんとまぁ、話の早いオナゴったい!」と。
ナギ:モツ鍋だから、博多弁ね。
なつき:で、奈良裕也がリーゼントで美しきツッパリ少年として登場、あと私の仲良しのコワモテべっぴんどもも登場、というイメージも出来てて。あいつらワルだったからさ、中学生からイキナリ大人に飛び級、みたいなヤツらだから、「青春をやり直してみれば夜露死苦!」みたいな感じで。
ナギ:青春ふたたび!
なつき:青春やり直し! ……って、やり直しても結局またスケ番かい! っていう(笑)。
ナギ:あはは。
なつき:でね、ストーリーもあって。普段、学生鞄つぶして、木刀構えてるようなツッパリがさ、バイクに乗って隣町のサテン「喫茶月影」に行くわけよ。そしたら、「そのサテンに、すっげー上玉の娘(コ)がいたんだよ! 天使がいたんだよね!!! あの娘(コ)、またいるかなァ……」っていう。
ナギ:きゃー。青春! それで、タイトルが「俺発、天使(あの娘)行き」なのね。
なつき:でさ、サテンと言えばさ、やっぱりプリン・ア・ラ・モードでしょ?
ナギ:うんうん。それで、サテンの壁に、好きなあのコとの相合傘のラクガキ書いちゃったりするのね。
なつき:そうそう。イキがってタバコ吸いながらね。
ナギ:で、「喫茶月影」の名物ママに、「アンタら、ラクガキしてんじゃないわよーッ!」とこっぴどく怒鳴られる、と(笑)。
なつき:怒鳴るどころか、修理代3倍にして払ってもらうわよッ!
一流のスケ番は、後輩を呼び出さない
ナギ:で、なつきさんって、スケ番だったの?
なつき:違うわよぉ! アタシはむしろ「オリーブ少女」だったんだってば!
ナギ:あ、そっか。私たちオリーブ少女だったのよね〜って話したことあったね。
なつき:この際、皆さんに覚えておいてもらいたいんですが。アタクシは中学時代、超初期の「オリーブ少女」でしたから! 徒党組んで同じ格好してるとか大嫌いだったし、ツッパリとかバカにしてたの。
ナギ:1980年代半ばあたりの横浜って、ツッパリとかいた?
なつき:全盛期よぉ。公立中学だと、木刀を持ってるヤツとか普通にいる感じ。
ナギ:えー! こわ…。
なつき:アタシ、そういうのダサいと思ってたから、「田舎の不良とかってカッコ悪いよね」みたいに言ってたら、それが不良どもに伝わっちゃってさ。なんと、学校の裏の神社に呼び出されちゃったの!
ナギ:神社に呼び出し! 大映ドラマみたい!
なつき:で、7〜8人の不良(女)の先輩たちに囲まれて、「オマエ、何言ったか言ってみろよ?」とか言うから、「田舎の不良はダサいって言いました」「制服の下にジャージ着てカッコ悪いって言いました」とか真面目に答えてさ(笑)。しかも、石とか革靴とか投げつけられちゃってさ!
ナギ:ひぇー。リアル『不良少女と呼ばれて』だね! 私、小学生の時に大映ドラマ全盛期だったから、そういうのはドラマでは見てたけど、リアルでは経験してない。怖すぎる。
なつき:でね、続きがあってさ。その女どもに囲まれてたら、今度は、男の不良の先輩たちまでやって来て、「ちょっとオマエ生意気なんじゃねーのー? ふざけんなよコラァ」とか言ってきちゃって。コワイんだよー、普通にシンナーやってるしさ、マスクとかかけてるような人たちだから(笑)。さすがに、男の不良が来ちゃって「ヤバイな」って思ってたらさ、その輪からちょっと離れて立っていた美男子の不良がポツリと、「別にさ、そういう子がいたっていいと思うけど、俺は。考え方なんて人それぞれじゃん」みたいなことを言ったの!
ナギ:えぇぇ!!!
なつき:もうビックリしちゃったわよ! あれにはちょっとシビレたわねー! あとね、もう一人ちょっと記憶に残ってるスケ番がいて。S田先輩(女)っていうんだけど、髪が、長めのパンチパーマだったの。
ナギ:えっ、えっ? 中学生で女子でパンチパーマ?!
なつき:さすがにそんな女子は、その先輩だけだった。その先輩はちょっとクールな感じでさ、ほかの不良とは一線を画してて、誰とも群れない一匹狼だったの。中学卒業と同時に、893と結婚しちゃったという噂。
ナギ:別世界すぎる。
なつき:そういう人はね、アタシみたいなオリーブ少女を神社に呼び出す、なんてことはしないのよ。一流のスケ番はね、後輩を呼び出さないッ!
ナギ:一流のスケ番……(笑)。
チーム「火娑舞乱嘩(カサブランカ)」と
チーム「鰤嫉妬婆流道(ブリジッドバルドー)」
ナギ:ところで、こないだ、表参道ROCKETで開催された新作浴衣発表会で、「暴走淑女 鰤嫉妬婆流道(ブリジッドバルドー)」って書かれた提灯がかかってたじゃない? あれ笑っちゃった。
なつき:「ソフィア・ロー連」以来の、最高のネーミングでしょ? 「暴走淑女 鰤嫉妬婆流道(ブリジッドバルドー)」って、月影劇場におけるレディースのチーム名だからね!
ナギ:いろいろ設定があるのね?
なつき:そう。まず、富士子ちゃんは、イカツイけど美しい大人なスケ番で、イジメられっ子には優しい先輩。富士子先輩のチームが、「暴走淑女 鰤嫉妬婆流道(ブリジッドバルドー)」。で、奈良裕也さんは、ヘタしたら7、8歳上の女と付き合ってる美しきツッパリで、裕也さんのチームが、「火娑舞乱嘩(カサブランカ)」。東子ちゃんは、聖子ちゃんカットでブリッ子してるんだけど目が笑ってない、裏でタバコスパスパなスケ番なのよ。でね、奈良裕也の親衛隊から、相手役の東子ちゃんと富士子先輩にカミソリが送られてくるっていうね。
ナギ:あはは。丸文字の脅迫状とか送られてきそう(笑)。
なつき:スケ番が意外とファンシー趣味だったりするの、カワイイじゃなーい?
ナギ:ファンシーと言えば、東子ちゃんの聖子ちゃんカット、可愛かった! 30年ぶりくらいに、両サイドを流している人を見て感動した。
なつき:でしょ? 東子ちゃんたら、この月影劇場の撮影のために、なんと実際に髪の毛切っちゃってさぁ、地毛で聖子ちゃんカットにしちゃったんだから!!!
ナギ:つまり、サイドに段を入れちゃったのね? そこまでするとはー!
なつき:本当に覚悟がキマったナオンよ。さすが我がマブダチ!さすが月影屋のミューズ!!
ナギ:あと、富士子ちゃんの髪型もダイナミックだねー。あれは70年代風? 何ていう髪型なのあれ?
なつき:あの髪型はねぇ、名称がわからないのよ……。もしあのヘアスタイルの名前を知っている方がいたら、ぜひ月影屋へお知らせくださ?い! あれはね、ピンクレディーがアメリカ進出した時に、ミーちゃんがしてた髪型なんだよね。残念ながら、アメリカ進出は失敗に終わったけど。
ナギ:そうか(笑)。ということは、google先生によると、1979年あたりかな? 70年代ウルフカットと80年代パンチパーマが混ざったような髪型だね!
なつき:そうとも言える(笑)。この写真をね、ヘアメイクさんに見せて、「こういう髪型にして!」ってお願いしたワケよ。
ナギ:でもさ、ここで「聖子ちゃんカット」「聖子ちゃんカット」って連呼してるけど、お若い方々にしたら、「なんだそれ?」だろうね……。
なつき:それどころかね、「ソフィア・ローレン」も「ブリジッド・バルドー」も知らない子も多いのよ〜〜〜。
ナギ:あーー。そもそもの設定が(笑)。
なつき:通じてない(泣)。
ナギ:でも、月影劇場をきっかけに、新たな世界を知るのもまた面白いんじゃないかな?
なつき:スケバンとツッパリとブリッ子の世界を、ね!
ナギ:私も今回、勉強させていただいてまーす!
なつき:……て、貴女、ほぼ同世代よねぇ? サバ読むんじゃないわよっ(笑)。まあ、とにかく、もう一度言いますが、皆さん、「夜露死苦浴衣」は今年の新作ですからねー! 次回も、夜露死苦!!!!!
井嶋ナギ
東京生まれ。
上智大学文学部にて江戸文学を学び、現在、文筆家。日本文化(着物、歌舞伎、日本舞踊、江戸文学、日本文学、日本映画など)を得意フィールドとし、「現代の生きた文脈で日本文化を捉えなおすこと」を課題としている。
著書に『色っぽいキモノ』(河出書房新社)。
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早稲田大学オープンカレッジにて、浮世絵、歌舞伎、映画、文学などを題材にキモノの歴史をひも解く「文化史講座」を開講中!
「井嶋ナギの日本文化ノート」
「井嶋ナギの浴衣講座」
重田なつき / 月影屋 店主・デザイナー
日本大学理工学部建築学科卒業。
2001年、月影屋を創業。2004年、渋谷区富ヶ谷に路面店をオープン。
今夏12年目を迎えたラフォーレ原宿エントランススペースのほか、伊勢丹新宿店、渋谷パルコ、福岡IMSなど全国でポップアップショップを開催。ロンドン・ファッションウィーク及びパリ・ファッションウィークへの出展や、台北でのポップアップショップなどを通じて、海外にも顧客層を広げている。また、特集番組を組まれたNHK
WORLDなどの国外向けメディアや、海外メディアからのオファーも多数。
ナギとなつきの高いもん喰わせろ
対談ナギとなつきの高いもん喰わせろ
ナギと!なつきの!!高いもん喰わせろ